ご挨拶

主藤孝司

書籍には不思議な力があります。
なぜなら、書籍を出版すると「先生」と呼ばれるからです。また、書籍に書かれていることは、人々に素直に信じられる傾向が強くあります。
同じコンテンツをホームページやブログで発表、表現しても、「先生」とは呼ばれません。また、その内容もうがった見方をされることが多くあります。
しかし、同じ内容を書籍で出版すると、正反対の評価が得られてしまうのです。
これはなぜでしょうか。
なぜこのような不思議な力を書籍は持っているのでしょうか。

それは、元来書籍は、国王や国家又は聖職者たちが著者として、国家や国王自身、或いは教祖による組織運営のルール(法律、戒律など)の
周知が目的となされ、自身の権威付けや権力誇示が目的とされて出版されていたものだからです。
ですから私たちは潜在的に書籍を貴重なものだと認識し、粗末にせず、大切に大切に扱っているのです。
当然、その著者は、国王に匹敵する程の社会的影響力がある人だ、と無意識に読者は思ってしまいます。
そして何百年と続いている書籍特有のあの「重さ」と「厚さ」と「形」に、無意識レベルで価値を感じているのです。
書籍が持つこのような不思議な力はそのまま、著者が背負っている社会的責任とも言えます。

本の歴史を紐解けば当たり前のようなこれらの歴史も、私たちはほとんど知りません。
それは商業主義第一となっている今の出版業界では、忘れられてしまっているのかもしれません。

こういったことを伝えていくことも、私は「出版物の認知向上活動」であると考えます。
それを果たすのも、「ベストセラーズチャンネル」の一つのミッションです。

最近では電子出版も盛んになりました。
電子出版は写真業界でいえばデジカメ、音楽業界でいえば楽曲のダウンロード販売です。
つまり、この流れはますます強くなり、一般化し、日常となります。同時により多くの人々に作品を知ってもらう機会も増えてきますので、
出版業界にとっては大変歓迎すべき変化です。
デジカメと音楽のダウンロードは写真フィルムと音楽CDを不要にしました。それと同様に今まで以上に写真と音楽は私たちの生活に身近な存在へと
新化しました。
出版業界でもこれと同じこと、いや、それ以上のことがこれから続々と起こってきます。
そしてその流れは誰にも止めることはできません。
しかし、それでも紙の書籍はなくなりません。
なぜなら、紙の書籍がもっている「重さ」と「厚さ」と「形」を五感で感じることを、人々は潜在的に求めているからです。

これが電子書籍が普及していっても、紙の書籍がなくならない理由です。
そして、人間の五感に直接働きかける書籍がもっている「影響力」は、どのメディアよりも強力で価値あるものとなっています。
もちろん、中身のコンテンツが重要であることは言うまでもありません。
しかし、コンテンツを伝えるだけの役割であれば、それは電子書籍でも担えます。
しかしながら、電子化されても究極的に再現不可能なもの。ビットの世界では再生不可能なアナログのリアルな世界。
もちろん電子書籍の普及拡大によって出版業界が明るい未来をつくりあげていくための取り組みも積極的に行っていきたいと思っています。
それが、書籍から五感で感じるメッセージなのです。

先行して電子化が進んでいる写真業界、音楽業界、銀行業界、証券業界、保険業界、旅行業界などと出版業界が究極的に相違する部分がここです。
私は、「ベストセラーズチャンネル」を通じて、このような書籍が持つ本来の価値と役割にも改めて注目し、多くの方々に本が持っているおもしろさや
楽しみも伝えていきたいと考えています。
それは著者としての私の思いでもあります。

出版業界と新聞業界は、独占禁止法の適用除外規定によって純然たる市場競争から隔離、保護されている最後の業界です。
そして私たちは、その保護が解かれ、いつどのような変化が起こっても「想定内」となるべく準備をしておかなければなりません。
では具体的にいったいなにを行えばいいのか。それは誰にもわかりません。
しかし少なくとも、許容される範囲内において、新しい試みをどん欲に取り入れ、試し、経験を積んでいくことに疑いはないのではないでしょうか。

もともと私は、小さな地方企業の社長にすぎません。
図らずも執筆の機会を頂戴し、上梓させていただき、ベストセラーと言われる書籍も何冊か出版することができました。
しかしながらどうしても、世の中を経営者の視点、起業家の感覚で見てしまう癖がついてます。
出版業界についてもそれは例外ではありません。
起業家大学を通じて数多くの著名な経営者、起業家のみなさんからご協力、アドバイスをいただいてきました。
そこでいただいた数々の助言とご提案を元に、一著者としての私の思いもふくめて具現化したものが、この「ベストセラーズチャンネル」です。

「ベストセラーズチャンネル」は、私が考える業界の変化対応策の一つであり、壮大な実験でもあります。
何らかの形で業界の激変緩和にもお役に立つことができるのではないかとも思っております。
その試みに、既に100名を越える著者、出版社、編集者のみなさんにご協力いただいていることは、感謝の念に耐えません。
既に「ベストセラーズチャンネル」は、日本トップの著者・書籍紹介番組となりました。

「ベストセラーズチャンネル」のみならず、私が行っている数々の試みは、学会発表等を通じて業界共有の財産とすることで、
かけがえのない出版業界の健全な発展に微力ながら役立つことができればと考えております。



.FM放送ラジオ番組「ベストセラーズチャンネル」
ゼネラルプロデューサー
日本著作出版支援機構 代表

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